BOTYで見るゼロ年代のブレイクダンス 1/3

明けましておめでとうございます。


2010年も始まりました、ということで
だいぶ時期遅れな感じも致しますが
今更ながらゼロ年代ブレイクダンスを自分の感じた範囲で
振り返ってみたいと思います。

BOTY(battle of the year)は世界最大のブレイクダンスイベント、と言われています。
参加国数、参加人数の多さもさることながら
showcase,battleが見れるため
世界のトレンドをいち早く知る方法として
ダンサーたちの関心も高いです。
そこで今回手っ取り早くゼロ年代を振り返る方法として
BOTYにスポットを当ててみたいと考えています。

00年、ワセダの2位&bestshow


2000年のBOTYではワセダブレイカーズが日本国として初めてバトルに残りました。
それまでの日本のブレイカーは体格&リズム感が外国と比べて劣っている、ブレイクに向いていないと言われていました。
98、99とスパルタニックロッカーズ(日本&スイス)が健闘していましたが惜しくもバトルには残れませんでした。

ワセダは決勝で戦ったFlying steps(ドイツ)に比べビックムーブを持っているでは無し、パワーで返すのはbboy o-hashiだけでした。
しかし一人一人の独創的なムーブや印象に残るルーティーンで、世界を相手に一歩も引けを取らない試合を見せてくれました。

ワセダブレイカースは日本人にとって大きな指標になったと共に、バトルの流れの創り方に新しい風を吹き込んだチームであるともいえます。

01年、wantedの登場

Wanted(フランス)の登場はまさに衝撃でした。
ブレイキン色の薄いコレオグラフ、大胆な舞台の使い方、そしてbboy juniorのクレイジームーブ。
ハウスとブレイクの融合は前年にCircle of fire(アメリカ)によって試みられてますが、その時は個性が突出しすぎてなんだかよくわからない感じになっていました。
いわゆる既存のブレイクダンスとは違う、アブストラクト方向への進化の萌芽は
Wantedによって作られたと言っても過言ではないと思います。

そして韓国の台頭。
初登場であった韓国は、そのスキルの高さで世界を驚かせました。
確かvisual shockにはT.I.Pの面々やbboy bornも所属していました。

02年、hong10&salahの年

02年には各国のコレオグラフ能力も大幅にアップし、単なるソロ回しで終わるチームは殆どいなくなりました。
また一撃(日本)やdeeptrip(スイス)に見られるようなテーマ性を重視したshowも登場するようになりました。
一方でかつて優勝を経験したFlyingstepsのメンバーを中心に、CICOやBenjiなどを加え結成されたkilla beez(ドイツ)が
まさかの決勝に上がれず。各人の能力値がべらぼうに高くてもソロ中心では勝ちあがれない時代の到来です。

この年の優勝チームは各々2人の天才を中心に回っていました。
salah(vagabond;フランス) と hong10(expression;韓国) です。
salahはpopping界でも名を馳せているダンサーで、肩の2重関節を生かし音を大事にしたムーブをします。
かつてはThe familyというフランス大御所チームに所属していました。
かたやhong10はハロー系ムーブを得意とした当時若手だったと記憶しております。
クリーンだけど確かにエナジーを感じさせるダンサーです。

この2人が戦況を左右していました。
2人ともジェネラリストでありながら色をもっており、またインパクトのあるスキルを持っていました。
特にhong10のムーブは衝撃だったようでハロー系で音を刻むムーブが流行りました。
この年からボディコントロールに対し、意識して評価されるようになったと僕は思っています。


映像がありました。
7、8年たった今でも凄さがわかるかと思います。



次回は03〜06年を振り返りたいと思っています。

youtubeはブレイクダンスを殺すのか?

90年代ブレイクダンスの受難


文化というものはブームが過ぎた後、ブーム前よりも廃れるという傾向がある。
というのも一度流行するとあまり熱心ではない人もその文化について知ることになり、急に"にわか"が増えることになる。人口が増えることにより熱は急速に上がるがやがてそのにわかが離れていくと、旧来のその文化を支えていた人たちも、上がった熱量との落差にかつてのような充足感を得られずに自然とかつてのように楽しめなくなる、というわけだ。
さらにファン心理として人口の増加による評価の定形化も一つの影響として考えられる。自分が認めた価値を他人と共有できる、というのが文化の一つの魅力ではあるが、それが何度も何度も同じように繰り返されればそれは陳腐化し、簡単にいえば飽きがくるのだ。
Jリーグ」や「クランプ」などあれほどもてはやされた文化達も今や後ろのほうで熱心なファンが紡いでいっている状態となった。


ブレイクダンスも同様の経験をしており、80年代中盤に世界的ブームを引き起こした後、アメリカを中心にブレイク離れが進んでいった。映画「wildstyle」「breakdance」のヒットをきっかけにメディアもこぞってブレイクダンスを取り上げたが、Newjackswingの隆盛と共ににわかダンサーの興味はそこに移動。またブレイクダンス中の事故が起こる度にニュースで問題になったらしく、90年代前半にはもう次第に「時代遅れ」の終わった文化として扱われるようになったらしい。


この「時代遅れ」のレッテルが厄介で、社会全体にその空気が蔓延している間はいくら熱心なファンが啓蒙しようともブームが再燃することは稀であるし、再評価のチャンスすら与えることはない。その為完全に廃れ無くなってしまった文化も多く存在する。文化を緩やかに殺す毒たりうるのだ。
結局ブレイクダンスがその後どのように復活したのかというと、ブームを他の国と遅れた時期に迎えた地域、もしくはそれほどまでに大々的にブームにならなかった地域、さらに詳しく言えばまだ時代遅れとは認識されていなかったヨーロッパを中心に文化が発展し、大きい大会が開かれていった為、再評価の機を与えられることとなったのだ。


こうしてブレイクダンスは荒廃を逃れた文化として今も残っている。

全国総○○化現象


2000年以降のブレイクダンス環境はそれ以前とは少し変わったものとなった。以前は他地域のダンサーの情報や局所的な流行を知るためには、遠くのイベントに出場するかビデオを購入するしかなかった。
しかし今は気軽につながるネット、特にYoutubeの登場により情報は無料で、しかもすぐに得られるようになった。その為今は世界中でブレイクダンスの動画が流行し、ブレイク人口が増えているという。battle of the year ではその影響が顕著に表れている。今まで表舞台に出てきて無かった(推測ではあるがおそらくそこまで文化が成熟してこなかった)CIS諸国や中欧、アフリカ中南部のクルーが予選を通過して活躍している。

ダンス文化と動画共有サイトは親和性が高い。元々がエンターテインメントとして発展したダンスは目を引く上に、人々の興味関心を持続させるためにはとても有効である。商業的価値を再認識されたブレイクダンスは、メディアにまたも取り上げられるようになった。映画「YOU GOT SURVED」は成功をおさめ、アメリカ、フランスではオーディション形式の素人参加型ダンス番組が受け、韓国では一般人が見に来るぐらい大衆化されている。日本でも少年チャンプルダンス甲子園復活により一時のブームのような様相を呈してきた。
これは動画共有サイトが寄与した点が大きい。そのようなサイトによってbboyingのエンターテインメント性が再評価されるにいたったからだ。



が、一方で今全国的にダンスの熱が冷めているという声もある。
世界的なダンスイベントでの客の盛り上がり方を見てもあまり歓声が上がっていないと思う事があるし、実際自分がイベントに出てみてもそう感じる時もある。本当にダンス熱が降下してきているとしてその原因は一体どこにあるのだろうか。



自分が思うに90年代に起きたブームの終焉と同じ構造の現象が今起こっているのではないであろうか。
Youtubeによりブレイクダンスという文化への敷居が低くなり、ライトなファン層が増えた。そこで一時的に声は大きくなったが、その人たちが徐々に興味を無くし離れていっている
事により相対的に熱が冷めているように見える。
またYoutubeで簡単に情報を得られるようになったため、「何が流行っているのか」をすぐに知ることができる。そこから「何をしたら受けるのか」という発想に至るのは容易だが、それのベースの知識がみんな一緒なので各人のスタイルは似通って、その時の流行りのbboyが大量生産される。そこから飽きが来るのではないか。lilouが流行った時巷のyoutube動画では似非lilouが増えた印象がある。現在のback to basicの流れも似非oldschoolが増えたな、と感じる。
90年代のブームの時のようにメインカルチャーにまでのし上がったわけではないが、確かに最近シーンは盛り上がりを見せ、またスタイルの多様性は徐々に流行に蝕まれている。昔からのダンサーにしてみればダンス文化の陰りを危惧するのも当然の流れと言えよう。

ブレイクシーンが死にませんように


全然有名じゃない一介のbboyにしか過ぎない自分がつらつらと書いてみたわけだけど、実際このままブレイクダンスが廃れていくと思っているのかと言われれば、正直そんな事はないであろうと楽観視している。熱が冷めてきた実感はあるけどそれも兆候にしか過ぎないし、自分を含め、もし仮にブレイクダンスが文化としての寿命を完全に終えたとしても踊り続けているという人は確実に存在するからだ。


しかしこのままライトなファン層だけを呼び込み、飽きがくるほど流行を追っていると、確かにシーンは盛り下がりお寒いことになる。
youtubeだけが敵であるかのように表題を書いたが実際youtube含むネットには功罪存在し、使い方によってはもっとシーンを盛り上げるために効果を発揮するであろう。
流行を知ることもダンスが好きな人が増えることもどちらも悪いことではない。

「自分だけのオリジナリティ、カラーを持て」とダンスの大御所たちが口を酸っぱくして言うのも、踊っている個人にだけ言ってるものではなくシーン全体の発展の為に意味がある、ということなのかもしれない。
ただ、単に流行りの動画を見て、もしくはアップロードして終わり。ではなくもっと考えて、よりシーンを盛り上げていくにはどうしたらいいか、もっとブレイクダンスが発展するためにはどのようなアプローチがあるのか探求していく必要があるのではないかと自分は考えるのだが。

はじめに

はじめに

この度自分のブログから日常以外を切り離してはてなに置くことにしました。
こちらでは毎日ブレイクダンスに対して考えたこと、思ったことを
思いだした時にメモ帳的に残していきたいと思います。

自己紹介

皆さんはじめまして。
沖縄でブレイクダンスをしているbboy フトシといいます。
所属チームはHardcore8planz。結成2年目のクルーです。
尊敬するダンサーは bboy benji
スキル系目指しています。
生物学専攻。漫画大好き人間。

このブログのスタンス

「ダンス」は個々人によって様々な解釈があり、全員が納得するような理解や正解というものは存在しない。
と、自分は思っています。
なのでここで述べられる事は全て、僕自身の解釈にしかすぎません。
そこに様々な意見がぶつけられる事により、総意が形成されていくので


「○○という事実があるから自分はこの意見に絶対に反対だ。」とか
「なんだかうまく説明できないけど、それは違うと思う」とか
「なんだかその考え方わかる」的な意見


どしどしお待ちしております。